はやぶさは不死鳥に |
|
|
動画:NASAによる撮影、はやぶさの最期
はやぶさ、感動した。感涙だよもう。
まぁ、擬人化とかミク化とかってのは実際どうよと思うけど。 僕は「はやぶさ」は「はやぶさ」だからこそ、その賞賛は「はやぶさ」に送るべきだと思う。 技術者の卵としてそうありたい。
よそ様も、「はやぶさ」については色々書いてるだろうからここでは止めとこう。 あ、でも「イトカワ」について、みんなあんまり書いてないよね。
ってことでイトカワとその周辺について書いてみる。
――――――――――――――――――――
イトカワは、1998年にアメリカのMITの研究所によって発見され、2003年に日本のJAXAが「はやぶさ」の調査対象としたことから、糸川博士にちなみ命名を申請。
「なぜ対象がイトカワなのか」ということについては、この探査自体が、多くの工学実験を目的としたものであることが大きな理由として挙げられる。 今回の実験の題目は以下の通り。
1. イオンエンジンによる推進実験 2. イオンエンジンの長期連続稼動実験 3. イオンエンジンを併用しての地球スイングバイ 4. 微小な重力しか発生しない小惑星への自律的な接近飛行制御 5. 小惑星の科学観測 6. 小惑星からのサンプル採取 7. 小惑星への突入、および離脱 8. 大気圏再突入・回収 9. 小惑星のサンプル入手
これらの工学実験のなかで、もっとも重要な目的が、6、7、9.サンプルリターンであり、そもそもの開発や研究の発足が、サンプルリターンを目的としていることからもそれは明らかである。 サンプルリターンが最も重要である理由というのが、小惑星には原始の宇宙の姿が残っている可能性が高いからである。
地球で宇宙の成分について調べるとき、今までの手法では落下した隕石の成分を調べるなどといったことしかできなかった。
しかし隕石は落下する際に、大気との摩擦によって、また地球の環境により変質してしまう。 またアメリカが月に行って月の石を持って帰ってきたが、月は25億年前には火山活動があり、その成分は変質してしまっている。
その点で、小惑星は45億年前から同じ姿を保ち続けているため、宇宙の成り立ちなどの研究では大きな成果といえる。 もし有機物が含まれていた場合には、その価値は飛躍的に上昇するかもしれない。 (はやぶさの持ち帰ったカプセルは大気圏突入時にプラズマ化するほど高温になるが、宇宙空間の状態をそのまま保持したカプセル内は真空なので温度は伝わらない)
しかし、イトカワのような小惑星が対象に選ばれた理由はそれだけではない。
例えば火星程度の惑星に着陸すると、重力が大きすぎるためはやぶさの非力なエンジンでは火星の重力を振り切れないため適さない。
そもそもはやぶさに搭載されるエンジンはキセノンイオンエンジンで、大気中では使用できない。 ロケットエンジンはその定義として、作用反作用の法則を利用するエンジンを言うが、キセノンイオンは質量が非常に小さいため、噴射してもその反作用も非常に小さい。 ただしその特性として、噴出速度が非常に大きいこと(30km/s)、燃料の使用量が極端に少ないことが、宇宙での非常に長いスパンでの航行に適している。 (ちなみに液体燃料ロケットなどの固体ロケットの噴出速度は3km/s)
また打ち上げに使用するロケットであるΜ-Ⅴ(ミューファイブ)ロケットが、あまりに長大な距離への打ち上げが出来ないことも挙げられる。
これらのことを加味し、「原始の成分を保持し、なおかつ到達可能であり、脱出可能である」 という条件を満たしていたものが、イトカワなのである。
ところでイトカワの語源となった糸川英夫氏について。 この糸川という人はロケット開発の父として、日本におけるロケット開発の初期から研究してきた人物。 中島飛行機にて九七式や一式戦闘機 「隼」 などの設計に携わり、戦後にはペンシルロケットを開発した。
ペンシルロケットというのは、文字通り超小型サイズのロケット推進機関のことで、身長は23センチから30センチだが、完全なロケットシステムとして成立していた。 ただし実用にはもちろん耐えられないため、ペンシルロケットは形状やバランス、材質や空力特性の解析と研究用である。
それまでの技術の最も一般的なやりかたでは、「大きい物を徐々に小型化・実用化」であり、身近なものではウォークマンやケータイ電話はその最たる例といえる。
しかし糸川の「逆転の発想」により、「小さなものから大きなものへ」という目的で研究されたのがペンシルロケットであり、極端にいえば、「はやぶさ」を打ち上げたミューロケットシリーズなど、日本のロケット技術の礎となったロケットといえる。
糸川の開発・研究は、当初の思想通り ペンシルロケット(23~30センチ) ベビーロケット(約1.2メートル) カッパロケット(2~7メートル) ミューロケット(20~30メートル) (参考:H-2Aロケット(57メートル))
というように、徐々に大型化され脈々と続けられている。 ミューロケットは2006年に開発が停止し、2010年4月、次期ロケットがイプシロンロケットとなることが発表された。
追記あり
| |
|
|
|
2010年6月14日(月)23:04 | トラックバック(0) | コメント(0) | 日常 | 管理
|
|